香りのある花4〜チュベローズ・ハス・ハニーサックル・藤・ヘリオトロープ・キンモクセイ・ユリ・ライラック・ラベンダー・ラン

植物

チュベローズ

チュベローズはメキシコ原産のヒガンバナ科の球根植物で、強い芳香を持つ白い花を咲かせます。

夕刻から夜間にかけて甘い香りを放つことから月下香とも呼ばれます。

香料の採取が行われていて、香水の原料として重要な花です。

チュベローズの香りはたくさんの種類の香気成分からなっています。

おもな香気成分は、強い甘みを持つラクトン類、スパイシーなオイゲノール化合物、フルーティーなエステル類です。

ハス

ハスはインド原産の多年生水生植物です。

日本でも夏に池などで、大きな葉の間からきれいな花をのぞかせているのをよくみかけます。

花には爽やかな芳香があり、地下茎のレンコンは野菜としてもおなじみです。

ハスは『旧約聖書』、『詩経』、『古事記』などにも登場する歴史の古い由緒ある植物です。

ヒンドゥー教では最高神の梵天がハスから誕生したとされています。

仏教では極楽浄土で咲き誇る花として知られ、泥の中から美しい花を咲かせるさまは、穢れた人道から天道へと至る輪廻転生のメタファーとみなされて、仏具や仏壇の意匠に用いられています。

おもな香気成分は1,4ジメトキシベンゼン、カリオフィレン、ペンタデカンです。

ハニーサックル

ハニーサックルは半常緑のつる性植物で、日本ではスイカズラおよび忍冬の名で知られています。

漢方薬として用いられ、花は麻酔性の濃厚で甘い香りを持ちます。

ハニーサックルの香りは、チュベローズ、オレンジフラワー、ローズ、ガーデニアの香りと相性が良く、ホワイトフローラルの香水によく使われます。

藤はマメ科のつる性落葉低木で、日本でも古くから親しまれてきました。

有力な后妃が住み、源氏物語でも光源氏の最愛の人、藤壺の中宮が住んでいたとされる京都御所の後宮七殿五舎のうちのひとつ、飛香舎は庭に藤の花が植えられていたことから藤壺の別名を持ちます。

香りの主成分はシス・ジャスモン、メチルジャスモネート、3-ヒドロキシ-4-フェニル-2ブタノン。

うっとりと酔わせるような、穏やかでありながらもセクシーな香りはヨーロッパの人々にも好まれ、香水の香りとしても人気があります。

ヘリオトロープ

ヘリオトロープはペルー原産のムラサキ科の低木です。

花にアーモンドやバニラを思わせる甘い芳香があります。

精油が採れますが、収油率が低いことから合成香料で代用されます。

香りの主成分はヘリオトロピンです。

フランスのロジェ・ガレ社の香水『ヘリオトロープ・ブラン』は、日本に入ってきた最初の香水として知られています。

ヘリオトロープの香水は夏目漱石の小説『三四郎』にも登場します。

キンモクセイ

キンモクセイはモクセイ科の常緑高木で、中国原産です。10世紀頃に日本に伝わりました。

秋の訪れを告げる黄色の小さな花は、拡散性のある濃厚な甘い香りを持ちます。

中国では桂花茶や桂花酒といって、花びらをお茶やお酒に加えたものを飲んで香りを楽しむ習慣があります。

香りの主成分はγ-デカラクトン、βイオノン、リナロール、リナロールオキサイドです。

ユリ

ユリはユリ科の球根植物です。

日本では観賞用のほかに鱗茎を食用にします。

日本に古くからある植物で、福井県の鳥浜貝塚からは縄文時代の炭化したユリの球根が発見されています。

キリスト教では聖母マリアのシンボルで、受胎告知の場面を描く絵画では、しばしばユリの花をたずさえた天使ガブリエルが描かれます。

花は香り高く、麻酔性の強い芳香を持ちます。

テッポウユリ、ヤマユリ、ササユリがとくに優れた香りをもつといわれていますが、香料を採るのは南フランス産のマドンナリリーです。

ライラック

ライラックはモクセイ科の落葉低木で、春に紫色や白色の香り高い花を咲かせます。

ヨーロッパでとくに愛好されている花です。

明治時代に、函館市のイギリス領事リチャード・ユースデンや、札幌市のスミス女学校(現北星学園)の創設者サラ・クララ・スミスによって日本に持ち込まれました。

耐寒性が強いため、北海道や東北といった寒冷地でよく植えられています。

ライラックはバラ、ジャスミン、スズラン、ガーデニア、チュベローズとともに六大花香に数えられています。

ラベンダー

ラベンダーは地中海沿岸地方原産の多年草で、甘く爽やかな香りを持ちます。

歴史の古いハーブで古代エジプトや古代ギリシア・ローマでもよく用いられていました。

精油は香水の原料やアロマテラピー用として人気があります。

現在では南フランスのアルプス山麓がおもな生産地で、日本では北海道で観光用として盛んに栽培されています。

香りの主成分はリナロール、リナリールアセテート、カンファー、カリオフィレンです。

ラン

ランには洋ランと東洋ランがあります。

洋ランはヨーロッパ人が持ち帰った熱帯産のランを交配したもので、大輪の色鮮やかな花が特徴です。

東洋ランは日本や中国などに自生する温帯産のランで、花は小さく色も地味で、花よりも葉の美しさが重視されます。

一般に、ジャングルに生息するランは素晴らしい香りを持ちますが、それは虫を呼び寄せて受粉を手助けしてもらうためです。

湿気が多く、見通しの悪いジャングルでは色や形で目を引くより香りを使ったほうが有利だからです。

反対に見通しの良い野原に生息するランは香りをもたず、目立つ色彩で虫を誘います。






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